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予定が無いのは悪いことではない

「会議や打ち合わせなどの予定がない」という状況と「仕事がない」という状況は全くの別モノである、ということを認識すべきです。予定があるということは、時間を割いてリアルにそこに行っているということです。その間は何もできません。

サラリーマンにありがちなのが「手帳が予定で埋まっている」状態でないと不安、あるいは予定が沢山入っていることが自慢、的な心理状態です。実はこれ、そこそこの規模の会社のサラリーマンで部下や同僚の存在があるから成り立つのです。

小さな会社を経営するのに同じ気持ちを持ち込んでしまうのはとても危険です。社長であるあなたの時間は、他の誰かでは代替できないというだけでなく、その予定に時間を使っている間は他のことが進みません。

会社には、「忙しいんだから、こんな会議に出ているヒマはないんだけどねぇ」などと言いつつもなんとなく嬉しそうに社内の会議にいろいろと出席している人が居るものですが、これはその間は何も生産していないわけです。自分一人の会社でこれをやっていたら、本来、お金になるはずの仕事を後回しにしていることになります(前倒しで片付けても良いのですが)。

聞いた話ですが、国内外の出張の予定を入れまくる、なんてことに腐心する人も多いとか。「いや、これはちょっとオレが行かなきゃダメかな」とか「ちょっと向うの様子を見てくるわ」的な緩い話で「出張準備」「アポ入れ」「長時間移動」「出張先でのさしてタイトでもないスケジュール」などで時間を使って、やはりその間は何も生産していないわけですね。

いずれにしても、予定を入れることが目的化しているかのような行動は、現場、あるいは本来やるべき仕事からの逃避、という側面が間違いなくあります。当然ながら、小さな会社ではそんな逃避をしているヒマはありません。特に一人でやっているような場合は、外注するにしても自分のところである程度のことをしないと、受注金額のうちの自分の取り分が残りません。自ら手を動かす部分があるからこその対価、という側面が間違いなくあります。

会議だ打ち合わせだ何だかんだ、と言われるままに外に出て貴重な時間を消費していては、何も進まないのです。もちろん、プライオリティを判断した上でどうしても行かなければならない、行くべきであるというときには出向きます。また、営業活動に注力しなければならない時期もあるでしょう。そういう時は、自分の意思で予定を入れるわけです。これは「飲み会」についても同じことが言えると思います。

そうでなくても、仕事は複数あるのが普通で、しかも割り込みの連続なわけです。クライアントからの相談事に対応したり、見積もりを作ったり、提案書を書いたり、などが日々発生します。手帳が白いからこそ、それらの事象に対応することができるのです。

予定があるということは、時間を割いてリアルにそこに行っているということです。その間は何もできません。一方で手帳が白いときは、インターネットにはアクセスしつつも、そのときにやるべきことをしています(あるいは遊んでいるのかもしれませんが)。とにかく自分の時間を確保しているということになります。もっとも、その時間をどう使うか、というのはまた別の重要な問題として存在します。

お金になることをするための作業時間を確保し、先々のための布石を打ちつつ、外注先からの納品物をチェックし品質を担保してクライアントに納品し、朝は早く起きて毎日休まず働いているけれど、手帳はけっこう白い、というのは実は悪くない状況のひとつの姿です。

「会議や打ち合わせなどの予定がない」という状況と「仕事がない」という状況は全くの別モノである(後者は望ましくないですが)、ということを認識すべきなのです。

 

書名
会社をつくれば自由になれる
出版社
インプレス/ミシマ社
著者名
竹田茂
単行本
232ページ
価格
1,600円(+税)
ISBN
4295003026
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