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大前提は「会社を当てにしてはいけない」

会社というものは、たった一つのプロジェクトの失敗から、あっというまに全体の業績が悪化してしまう、という例もいくつか見てきました。いつ、どうなってしまうか分からないのが会社です。サラリーマン生活をしていた頃でも、「会社を当てにしてはいけない」ということは常に意識していました。

自営業の家庭で育った人とサラリーマン家庭で育った人では、お金や商売、もろもろのリスクについての感覚にけっこうな違いがありますね。サラリーマン家庭で育って、サラリーマンをずっと続けてきた人であっても、人生の次の段階では「自営業的なリスク感覚」があったほうが良いかも知れません。

特に高度成長期を経験した世代、あるいは成長産業に属していた方の場合は、右肩上がりが普通の状態でしたから、一般に「仕事が無くなる」「会社が潰れる」といった状況についての経験値が少ない、ということはあると思います。会社は潰れても良いと言う面もなくはないのですが、個人は絶対に潰れる訳にはいきません。

個人的な経験で恐縮ですが、私は居酒屋の家庭で育ちましたが、家業は継がずに某コンピューター・メーカーに新卒でシステム・エンジニア(SE)として就職しました。そこでの経験は、得難いものでした。入社3年目あたりの約1年半、部署の仕事がまったく無くなってしまったのです。いわゆる干上がった状態ですね。入社3年目で残業代ゼロの基本給だけ、東京でアパート暮らし、という生活が1年半続いて、個人的にも干上がってしまいました(残業もなく酒も飲まず、体調だけは抜群でしたが)。

この体験から「会社を当てにしてはいけない」と強く考えるようになり、その後、専門雑誌の出版社に転職し、さらに自分の会社を作って独立しました。あの干上がった時期がなければ、それなりの忙しさとそこそこに充実感のあるSEとして、あっという間に時が過ぎて行ったかもしれません。入社3年目という段階で考える時間だけは十分に得られたのは、結果的には良かったと思っています。

またその後も、システム開発案件などにかかわる中で、会社というものは、たった一つのプロジェクトの失敗から、あっというまに全体の業績が悪化してしまう、という例をいくつか見てきました。

自分とは関係ないところでの不祥事、あるいはリーマンショックのような経済状況など、会社の根幹を揺らす要因はたくさんあります。いつ、どうなってしまうか分からない、それが会社だと思います。

私個人は、転職前も転職後も、前述の干上がった時期を除けば、それなりに安定したサラリーマン生活ではありましたが、「会社を当てにしてはいけない」ということは常に意識していました。

書名
会社をつくれば自由になれる
出版社
インプレス/ミシマ社
著者名
竹田茂
単行本
232ページ
価格
1,600円(+税)
ISBN
4295003026
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