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会計・税務の工夫も起業すればこそ

一人であっても会社を作ることの最大のメリットは「会社と自分は別人格であって、財布も別々だ」ということに尽きると思います。財布が別なので、お金の貸し借りができます。また、仕事関連の費用はすべて経費に計上できます。しかも、一人であれば、経費を使う立場でもあり、それを承認する唯一の立場でもあるのです。

一人であっても会社を作ることの最大のメリットは「会社と自分は別人格であって、財布も別々だ」ということに尽きると思います。

財布が別なので、お金の貸し借りができます。また、仕事関連の費用はすべて経費に計上できます。しかも、一人であれば、経費を使う立場でもあり、それを承認する唯一の立場でもあるのです。

問題は、売り上げがないと経費もないということで、「独立したら経費が使えていいなぁ、、、」などというのは、まったくのピント外れな羨み方だというのがよく分かります。売り上げさえあれば、自分の裁量だけでお金が使えます。そして、使えるお金がいくらあるかは、自分が一番良く知っています。

会社からは役員報酬を受け取ります(最初の売り上げも少ない段階では、月額数万円だったりすることもありますが)。会社は売上からさまざまな費用や役員報酬等の経費を引いて利益とします。

税金は、ざっくりいうと「個人へは役員報酬に対して」「会社には利益に対して」かかります。このバランスを上手く考慮することで、本来は払わなくてよいであろう税額を適正にすることができます。脱税ではありません。「納税の最適化」です。これ、会社という存在がないとなかなか難しいのも事実です。

ここでポイントなのは、会社というものは(株主が自分だけであるならば特に)利益は出なくても良い、ということです。利益には法人税がかかりますし(利益がなくても年間最低でも7万円かかりますが)、キャッシュフローさえあれば会社はつぶれません。

理想なのは、新規案件のための投資や必要な備品やサービスなど、いろいろなことに十分にお金を使って、結果、利益ほぼゼロだけれど、健全なキャッシュフローで何年も継続している、という状況でしょうか?

あまりに大きな会社の例ですが、amazonの経営がまさにこれです。「売り上げを伸ばし、そのために金を使い、利益はほとんどない」という状態で推移しています。42/54的には、売り上げを大きく伸ばす必要もないわけです。もちろん、永遠に続く案件はないので、案件の入れ替わりなどを含めての継続です。

具体的な法人税対策としては、いくつかありますが、お金を一時的に自分から離れたところに置く、というのがポイントになります。「倒産防止共済」「がん保険」などがその例です。

前者は、中小企業向けの「取引先が倒産したときのための売掛金確保のための共済制度」で、掛け金は身の丈に合わせて決められますし、全額経費扱いになります。後者は、商品にもよりますが、経費扱いで3年など一定期間以上かけると7-8割程度が戻ってくるというような内容の保険です。もちろん、がんになったら保険金が下ります。両者とも、一定期間は自分では使えない「世の中に回るお金」となります。そして中小企業経営者にとっては、会社をたたむときの「退職金積み立て」という性格があります。

また、家賃のように月額料金が決まっていて、サービス内容による料金の変化がないものについては、前年度に翌年度分をまとめて1年分払ってしまい、それを前年度経費にすることができます。つまり、利益が出てしまい多額の納税が予測されるようであれば、翌年分の家賃をその年度のうちに払ってしまうことで、利益を圧縮することができます。もちろん貸し手との契約内容や支払い条件にもよりますが、覚えておいて損はありません。

役員報酬については、年に1回しか変更できないことになっていますので、利益が見込めそうな年はちょっと多めに、そうでない年は少な目に、ということになろうかと思いますが、利益は経費を使うことで圧縮することにして、役員報酬自体は少な目に設定しておいてあまりいじらない、というのが良いのではないかと感じています。収入は、翌年の個人の税金に反映されますので、次の年に役員報酬は減らしたけれど去年の高い報酬で税額が決まる、という事態は避けたいというのもあります。

こういった共済制度や保険商品などを利用したり、税務に工夫ができるのも、会社があるからなのです。そして一つ付け加えると、会社設立時から信頼できる会計担当者と付き合っておくのが、スムースに会計・税務処理を進めていくためにはとても大事だと思います。一人会社であれば伝票の数も知れていますので「月額2-3万円+年度決算のフィー」くらいから対応してもらえると思います。別途、個人の確定申告についても依頼することができます。先に挙げた倒産防止共済のような例も、不得意分野を自分で勉強しているヒマはないわけで、会計担当者の知恵を借りた結果です。十分にお金を払ってお願いする価値があると思います。

書名
会社をつくれば自由になれる
出版社
インプレス/ミシマ社
著者名
竹田茂
単行本
232ページ
価格
1,600円(+税)
ISBN
4295003026
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