「27 料金表を作ろう」のエントリに関連して、フィーについてもう一つの側面を。
IT業界などに顕著ですが、いわゆる「ゼネコン式」なエコシステムになっている業界では人月単価というものに大きなオーバーヘッドが乗っています。何重にもなった外注構造、そのすべての階層で利益が出るようになったものが、プライムコントラクターの人月単価です。
例えば、あなたが所属していた会社のプログラマの人月単価が100万円だったとしましょう。これは、実際に手を動かすプログラマが50万円、間に入る会社の利益が20万円、あなたの会社の利益とコストが30万円、というような構造の100万円です。
あなたがゼネコン式ビジネスの上位に位置するSIerで、人月180万円相当のプロジェクトマネージャだったとしましょう。しかしこれには、会社の利益、共通部門のコスト、その他のコストなどが含まれています。180万円のうち、本当のあなたの価値はどのくらいかを冷静に考えなければなりません。給料の額面と比較してみると分かりやすいかもしれません。
この本当の価値を踏まえて「自分の価格」を設定するわけですが、もちろん以前の会社の給料の額面程度にする必要はありません。それでも「もし自分が発注する側だったら?」と考えると、「けっこう高いかもしれない」と思うはずです。でも、それで正解なのです。オーバーヘッドのない実質で仕事を請けること、それに自分が責任を以て取り組むことのクオリティを考えると、おそらくそれは妥当な金額の範囲です。
見積もりが1回で通ることもありますが、むしろそれは稀なケースかもしれません。なぜなら、業者の言い値で発注してしまうことを良しとしない風潮もあるからです。一応、値切ってみました、的な段階を踏むことが必要なのかな、といった印象を受けることはけっこうあります。ストレートな見積もりで値引かない、というやり方もありますが、あまりよくない物言いではありますが、吹っかけるのとは違った意味で弾力性を残しておくことも必要かもしれません。
さらに言えば、「サクッと見積もりが作れること」が重要です。なかなか見積りが出てこない人には仕事をお願いする気になりませんし、多くの場合、見積りを要求している側も彼らのクライアントに早急に見積りを出さなければならない状況にあります(実は明日の朝、だったりします)。
見積もりを短時間で作るには「作業内容が見通せていること」「その内容にかかる時間や発生するであろう問題について予測できること」が不可欠です(もちろん、エイヤっということもなくはないですが)。この点にこそ、あなたの経験が生きてくるのです。そして「料金表があること」で見積もり額がすぐに出せるというだけでなく、「どちら様にもこの金額ベースでお見積りさせていただいています」という説得力が出てきます。
- 書名
- 会社をつくれば自由になれる
- 出版社
- インプレス/ミシマ社
- 著者名
- 竹田茂
- 単行本
- 232ページ
- 価格
- 1,600円(+税)
- ISBN
- 4295003026
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