例えば、会社でそれなりのポジションを得て家に毎月50万円入れているとしましょう(いやいや80万入れてるとか言わないでください)。この社会保険も税金も、もろもろ引かれた後の「真水、50万」がいかに大変なことか、を身に染みて分かっている人がどのくらいいるでしょう。
大阪大学准教授の深尾葉子氏が指摘している「タガメ女とカエル男」のメタファーを出すまでもなく、何の問題もなく真水の50万円が毎月入ってくる家庭というものが、一つの典型的なイメージとしてあり、そうである場合にその状況を変えることはなかなかに困難なことである、というのもまた現実です。
起業するに際して、家族の存在は無視できないでしょうし、住宅ローンや子供の教育費なども含めて、本来、起業しておくべき状況であるにもかかわらず起業できずにいる理由(言い訳)にもなり得ます。
既にして起業せざるを得ない状況にあること、あるいは42/54的な人生イメージ、といったものへの家族の理解をどうやって得るか、という話はとても重要です。「どうしようと勝手だけれど、真水50万は崩すな」というオーダーは、それはそれで分かりやすいのですが、これが平然と出てくるようでは辛いとも言えます。
「中小企業白書2014年版」では、起業に理解があった、応援してくれた、という割合は36%程度だったとか(「第2章・第3節・1.起業意識の変革」参照)。
配偶者を社長や取締役にする、というのは、起業に巻き込んでしまうという意味でも、合意のうえで動いてくれるならば、良い方法の一つだと思います。取締役の追加は簡単ですし、家へ入れるお金を会社のコスト(役員報酬)にすることもできます。そうすると、役員報酬には税金も社会保険もかかるので、真水の50万円がどれだけ凄いことなのかがよく分かってもらえるかもしれません。
「真水、50万」から脱却できるかどうかは結果的な話かもしれませんが、家族への説明も含めて、単純に家に決まったお金を入れるのが当然という考えを検証してみる、いま出て行っているお金の額と使途が本当に妥当なのかをよく考えてみる、という視点は小さな会社を作ってそこを基点にして生きていくためには重要なことではないかと思います。

- 書名
- 会社をつくれば自由になれる
- 出版社
- インプレス/ミシマ社
- 著者名
- 竹田茂
- 単行本
- 232ページ
- 価格
- 1,600円(+税)
- ISBN
- 4295003026
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