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経営者とフリーエージェントの違い

営業するか/しないか、外注費は多いか/少ないか、の2点で簡単に区別できる2つの「経営タイプ」。あなたは経営者かフリーエージェントか、どちらであるべきなのか?

帳簿上に「外注費」が多くなるのが経営者、それがほとんどないのがフリーエージェントだ。一般にフリーエージェントは自分自身に内在している技能自体が商材だ。ベンダー(最終的な消費者に対して窓口になる企業)と直接やりとりしなくても済むケースも多い。教育が必要だったり、他のスタッフに助けられているようではフリーエージェントを名乗る資格はない。フィーは努力に対してではなく成果に対して支払われる。頑張ったかどうかは無関係だ。また品質の高いフリーエージェントは間違いなく仕事が早い。時間をかけることですごくいいものが納品された、という経験は(筆者には)ない。

フリーエージェントは「何をやりたいか」を問われない。周囲は「何ができる人なのか」にしか関心がないからだ。例えば優秀なフリーエージェントとしてのカメラマンとは、「顧客が欲しい写真を提供できる」人である。自分が撮りたいものを撮るカメラマンは、ごく一部を除いては、どんなに品質が高くてもアマチュアでしかない。

フリーエージェントに対する要求品質水準は一般に非常に厳しいが、品質相応のフィーが支払われること、外注費がほとんどないということから、うまく仕事が回ってくれば極めて利益率の高い商売、ということになる。外注費の多さに頭を抱えている経営者(筆者に他ならないのだが)からすれば非常にうらやましい人たちに見える。

さてフリーエージェントがほとんど行うことがなく、経営者がむしろそれが仕事の大半になるものは何か。いわずもがなであるが「営業」である。経営者の仕事は営業に尽きる。もちろんある特定の技能に秀でた経営者も多いが、優秀な経営者ほど自身のスキルが劣化(経時変化)していくことを前提にしている(そう考えると、フリーエージェントも最終的には営業主体の経営者にならざるを得ないはずという結論にはなる)。

「技能・技芸」をウリにする、という意味でフリーエージェントと技術者は良く似ている。むしろ技術は劣化していくことが前提になっていたり、トレンドに左右されたり、あるいは(めったなことで発現しないが)破壊的イノベーションが出現したりするので、フリーエージェント以上に厳しい戦いを強いられることになる。例の青色LEDで有名になってしまった「職務発明規定」の見直し(特許法35条)の問題もある。

大企業からスピンアウトしたエンジニアが起業してもうまく会社が回らないケースが散見されるのは「技術自身が抱える複合的な問題」に起因するのではないか。エンジニアは自分が習熟した技術、惚れ込んでいる技術と心中せざるを得ない運命にある。ソフトウエアエンジニアの場合は少々事情が異なるのでまだいいのだが、なんらかのハードウエアや装置に依存せざるを得ない技術者は特に厳しい戦いを強いられるだろう。

というわけで、エンジニアが起業を考えたときは、自身に営業マンとしての資質があるかを問う必要がある。「営業ができないからエンジニアやってるんだ」という反論が容易に想像できるが、もし営業すべく努力する、あるいはそのための準備をするつもりがないのなら独立しないほうがよい。営業出身が会社を作るのは1年程度の準備でも十分間に合うが、エンジニアがきちんと商圏を確保するのにはもう少し時間が必要なのではないか(感覚的には3年は必要な気がする)。または優秀な営業とペアになって起業することを前提にするのが現実的なように思う。

※ハードウエアに依存する技術者の起業についてはもう少し取材して改めて執筆してみたいと思う。

書名
会社をつくれば自由になれる
出版社
インプレス/ミシマ社
著者名
竹田茂
単行本
232ページ
価格
1,600円(+税)
ISBN
4295003026
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