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料金表を作ろう

自分でも「高いなあ」と思ってしまう価格を設定したほうがいい。なぜなら「価格とは無関係に高品質なものを納品する可能性が高い」からだ。特に起業直後はとても張り切っているはずなので、よい結果を出せることが判っている以上、妙な値引きはするべきではない。

起業とは何かのモノ、あるいはコトを販売することに他ならないわけで、そこには当然販売価格なるものが存在する。起業直後の価格設定は「不当に安い価格を自ら設定してしまう」という間違いを犯しやすい。まったく新しい会社で新しい仕事を獲得しようと考えるときに、どうしても価格が低いほうが成約しやすいと考えてしまう(実際、成約しやすい)。実績のない会社という「負い目」から、あまり強気に出てしまうと仕事が回ってこない可能性が高いという不安がアタマをよぎるのは仕方のないところだろうとは思うが、これは基本的に間違いである。

料金の決め方にはトップダウンとボトムアップの2種類があるような気がする。トップダウン方式は「その価格に相応しい業務を納品しよう」という考えかた、逆にボトムアップは、原価や間接費などを積み上げ、自分ができる業務に相応しい価格にしようという発想だ。立ち上げたばかりの会社に限らず、一般に価格はどうしてもこのボトムアップ・積み上げ方式の発想になることが多い。この価格決定プロセス自体が顧客に対する誠実さだと考えてしまうからだ。これは結果的に「下手(したて)に出て行って、低い金額で様子を見る」という戦略、つまり「低価格戦略」になる。

中年起業の勘違いのひとつに「自分を新米(しんまい)だと勘違いしてしまう」というのがある。確かに登記したのは先月かもしれないし、「生まれたばかりの会社」であることは間違いないのだが、それは会社(法人格)が新しいだけであって、あなたはもう肉体的な劣化が明確になりつつある単なるベテランのおっさんもしくはおばちゃんのはずである。だからそもそも価格は高くて当たり前なのだ。

というわけで、自分でも「高いなあ」と思ってしまう価格を設定、ただし、その価格に相応しい仕事を納品しようと頑張るほうが、利益率が高くなる。なぜなら低価格戦略時と「同じことをやるに決まっている」からだ。納品物の品質は価格とは無関係に高いことが想定される。特に起業直後は、緊張感を持って顧客の要望にきちんと応えるべく張り切っているはずなので、総じて納品物のレベルは高いと考えてよい。

例えばあなたが納品するものが月額固定フィーのコンサルタント業務だとして、ボトムアップ方式(積み上げ方式)で月額20万円という価格が算出されたとしたら、その算定基準は参考にしつつも、あまり根拠なく(多少乱暴な議論だが)とりあえず2倍の40万円にしてしまうのが正しい。その定価に相応しい仕事にしようと動くのでよりいっそう品質向上が期待できるということももちろんあるが、それ以上に「後から値上げするのはとても大変」という現実的な理由がある。なぜ大変かというと、最初に決めた価格は根拠が希薄にもかかわらず、価格を変更しようとすると明確な根拠が求められてしまうからである。なんだか循環参照している妙な議論に聞こえるかもしれないが、これが実際のところだと思う(不特定多数に大量販売するようなビジネスの場合はまた事情が異なる)。

いずれにしても、顧客との会話の中でなんとなく価格を決めてしまい受注してしまう前に、自身の商品についての「料金表」をあらかじめ作っておくことをお勧めする。料金表という基準を保持することで、自分の仕事のスタンスがきちんと見えてくる。

「では、ワタシのような業態の場合はどうしたらいいのでしょう?」という個別の問題については、基本路線は上記に沿った話としても、それぞれ解が異なるはずだ。個別解については別途議論しましょう、というのがこの42/54サイトのビジネスであるような気がしてきたので、他の2人のメンバーと相談しつつ、後日お知らせしたいと思う。

書名
会社をつくれば自由になれる
出版社
インプレス/ミシマ社
著者名
竹田茂
単行本
232ページ
価格
1,600円(+税)
ISBN
4295003026
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