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会計事務所をどう選ぶか?

会社を経営する上で避けて通れないものに「経理業務」があります。経理業務は売上に直結しないので、どうしても軽視してしまいがちですが、直近の経営成績を集計して現在の立ち位置を見つめることは、スモールビジネスの経営者にとって、このまま事業を継続できるかどうかを判断するための重要な尺度となります。

会社を経営する上で避けて通れないものに「経理業務」があります。経理業務は売上に直結しないので、どうしても軽視してしまいがちですが、直近の経営成績を集計して現在の立ち位置を見つめることは、スモールビジネスの経営者にとって、このまま事業を継続できるかどうかを判断するための重要な尺度となります。

経理業務の中でも、日々の会計処理はスモールビジネスであれば社長自身でもなんとかなりますが、年に1度の税務申告の方はそうは行きません。個人事業であれば確定申告時期に税務署に駆け込めばOKの難易度ですが、法人の税務申告書を未経験者が作成することはほぼ不可能です。

もしできたと思っても、そこにはいくつかの間違いがあったり、本来納めるべき額以上の税金を納めることになってしまっていたりします。

そういうわけで、税務申告を代行してくれる会計事務所との付き合いは法人であるならば必須となります。そして、どうせ付き合う以上、申告だけではなく様々な会計のアドバイスをもらって経営に役立てるのが得策です。

では、会計事務所はどう選ぶのが正解なのでしょうか。

会社を設立すると登記の記録を見て沢山の会計事務所がダイレクトメールを送ってきます。広告宣伝に力を入れている事務所はそこそこの規模があり、電話一本ですぐに営業スタッフが駆けつけて丁寧に説明してくれるでしょう。

しかし注意すべきことは、どんなにその営業スタッフの説明が上手かろうと、どんなに事務所や「所長先生」の経歴が立派であろうと、あなたの会社を担当するのは「駆け出しの新人」になるということです。月数万円の顧問料のクライアントに所長先生自らが担当するなどということはあり得ません。

したがって、契約を結ぶ前に一度は実際に担当するスタッフに会ってみて自分との相性を測ってみると良いでしょう。もちろん、仕事の精度などは一度会ったくらいでは分かりませんが、相性はフィーリングですのでここは実際に会って見極めておきたいところです。

駆け出しの新人に自社の経理を任せるのは不安な気持ちもあるでしょう。でも、悪い事ばかりとは限りません。例えばベテランの税理士先生が担当してくれたとしましょう。でも、あなたの会社はその税理士が担当する他のクライアントと比べれば事業の規模が小さく、片手間で処理しがちです。

その点新人スタッフは、あなたの会社の経理業務を一生懸命サポートしてくれることでしょう。社会人経験の乏しい新人と侮らず、他ジャンルの得意分野を持つ社会人として接することで、その担当者ははあなたとあなたの会社の役に立ちたいと強く感じるはずです。あなたの会社の成長と一緒にその担当者も成長し、それが一生の付き合いになるかもしれません。

ただし、お金を払って会計業務をアウトソーシングする以上、プロならではの仕事も当然求めるべきです。スモールビジネスの会社で特に役立つ情報は次の2つです。

1.最適な役員報酬の設定
2.資金繰り表の作成

1は、法人と社長であるあなた個人とのそれぞれの税金・社会保険料を比較し、あなたの給与(役員報酬)をどのくらいに設定すれば最も税金と保険料の負担が少なくなるかを検討します。2は、毎月の売上と費用の発生により、実際の現金の増減の流れ(キャッシュフロー)を把握し、必要となる資金の予定表を作成します。

どちらもとても経営に役立つ大切な情報ですが、これらの資料を作成することを会計事務所は意外に苦手にしているようです。多くの要素が複雑に絡んで作成に時間がかかるので、やりたがらない事務所が多いのです。

まずは、会計事務所の担当スタッフにこれらの資料の作成を敢えて依頼してみましょう。すぐに作成してわかり易い説明ができるようであれば、その事務所は社内の教育がしっかりしているのだと思います。逆に、なかなか対応してくれなかったり、はぐらかすような態度をとるようであれば、それは担当者及び事務所の力不足の可能性が大です。

税務申告をソツなくこなすことは、会計事務所にとっては当たり前のことです。それよりも、あなたが求める会計の情報を迅速に提供してくれるかどうかで、長く付き合える事務所なのかを判断しましょう。

書名
会社をつくれば自由になれる
出版社
インプレス/ミシマ社
著者名
竹田茂
単行本
232ページ
価格
1,600円(+税)
ISBN
4295003026
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