一人会社であっても会社の財布とオーナーである社長の財布は、まったくの別物です。会社が儲かったからといって自由に社長個人にお金を移すことはできません。オーナー社長とはいえ、あらかじめ設定した年俸にもとづいて毎月同額の給与を会社から受け取るのです。
商売の先行きは不透明なものですから、業績に応じて毎月の給与を設定したいところですが、税法がそれを許してはくれません。業績悪化の際に資金ショートを起こしては元も子もないからと、オーナー社長の給与はどうしても低めに設定しがちになります。
そこでバランスをとるために、サラリーマンであれば給与の中から支払っていた個人支出を、会社の経費(損金)として処理することができます。もちろん、個人支出を何でもかんでも会社の損金に付け替えれば「ただの脱税」です。でも、例えば個人で借りていた住宅を社宅として契約し直すなど、正当な手続きを経ることで損金として認められるものがあります。
損金計上しつつ先々に備えるための有力な手段の一つが、オーナー社長の「退職金」の積み立てです。
まず、社長個人の税金の観点から見ると、退職金には
(1)大きな退職所得控除がある
(2)課税対象は半分の金額で済む
(3)他の所得とは合算されない分離課税
という3つの特典があります。
つまり、同額を給与で貰うよりも税金が大幅に少なくなります。
もちろん退職金というくらいですから、何時でも気軽に引き出せるものではありません。「リタイア後の生活のための資金を個人の財布から蓄える代わりに、法人で積み立てる」とお考えください。
法人での退職金の積み立て方法ですが、定期預金などにキャッシュを移しても利益の圧縮にはなりません。「生命保険」や「倒産防止共済」(取引先の倒産に伴う売掛金回収不能に備える共済制度)といった商品や制度などを活用することで積立金を会社の損金にし、法人税を節税しつつ将来への蓄えを行います。
ただし、数年前の法改正により保険料の全額が損金になるような商品は、年払いできる金額が大幅に減少してしまっているので、退職金の積み立ては少額づつ長期にわたって行うつもりで、早いうちから保険会社や会計担当者などと綿密に相談をしましょう。
- 書名
- 会社をつくれば自由になれる
- 出版社
- インプレス/ミシマ社
- 著者名
- 竹田茂
- 単行本
- 232ページ
- 価格
- 1,600円(+税)
- ISBN
- 4295003026
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