別エントリ(14 経営者とフリーエージェントの違い)でも触れられていますが、人を雇うということは、その人を教育する前提であることを意味します。つまり、フリーランス的立場のあなたに仕事を依頼するということは、あなたのプロとしての能力を買うことにほかなりません。
そうなると、これまでの経験を武器にした仕事をすることこそが、あなたへのフィーが顧客にとって生きた金の使い方になることを意味します。「やったことありませんけれど頑張ります」はあり得ないのです。「私にはこれだけの経験がありますので任せてください」というセールストークになります。
さらに、顧客が不安に思っていることに対してこうすると良いという提案をするわけですが、その顧客が想定している範囲の話で終始しない、ということも重要だと思います。会社としての提案であってもそういう面は当然あるのですが、フリーランス的な立場であればなおのことこの点が大事です(もっとも、大風呂敷というよりは、プロとしての経験を感じさせる顧客には思いもよらないようなちょっとしたポイントですね)。
技術者の場合は経験というものをどう考えるべきなのでしょうか? ソフトウエア技術者を例にすると、専門性は重要なのですが専門の狭い範囲しかできないしやらない、という姿勢には危ういものを感じます。特にITでは、新しいものを常に受け入れていくことが飯の種になると思います。「経験」というものを個別の技術ではなくて、もっとメタな領域に当てはめる、という感じでしょうか。例えば、開発言語は違ってもプロジェクト管理の要諦はあまり変わらない、といったこともそのひとつでしょう。
もう一つ大事なのは、やはり「チーム」でしょう。仕事を回してくれる人、手に余る分を手伝ってくれる人、苦手なことを引き受けてくれる人など、自分がすべてをこなすのではなくてチームを編成してチーム全体で死角のない仕事をする。そのチームを複数維持していく、といったことになろうかと思います。技術者であれば、そのチームに技術的な目を光らせるわけです。
私の例では、前職での経験からコンテンツを中心としたWebサイトの運営に強みがありました。サーバー回りやセキュリティなどシステムについては、基本的な知識はありますが専門ではありませんので、信頼できる人や会社にお願いします。私の主な事業領域は、Webサイトの運営チームを編成し、コンテンツの企画、編集、制作といったルーチンを整備して、要求される品質での定常的なコンテンツ更新を継続させること、と言えるでしょう。
前職では、取材・ライティングといった仕事の経験もありますが、この分野は世の中に経験者や得意な人がたくさんいます。また、自分で書き始めると仕事を広げられません。よほどたくさん書けるなら別ですが、それよりは執筆が得意な多くの皆さんに書いていただいて、自分はコンテンツの品質を担保する役割を担うようにしています。
プロとしての経験を売るためには、ちょっとメタな視点で自分の経験を整理することが必要だと思います。
- 書名
- 会社をつくれば自由になれる
- 出版社
- インプレス/ミシマ社
- 著者名
- 竹田茂
- 単行本
- 232ページ
- 価格
- 1,600円(+税)
- ISBN
- 4295003026
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